巻頭言
新世紀に向けて,リハビリテーション医学は……
鈴木 堅二
1
1帝京大学医学部附属市原病院リハビリテーション科
pp.611
発行日 2000年7月10日
Published Date 2000/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109263
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21世紀はバイオと情報の時代と言われる.今世紀の前期から中期では物理と化学が主流であり,後期はバイオと情報が萌芽し,新世紀への下地を創った.一方,今世紀は不幸にも人類にとっては殺戮の世紀であり,皮肉にも近代リハビリテーションは二つの世界大戦を契機に発展してきた事実がある.わが国に導入されたリハビリテーションも半世紀ほどになり,日本人特有の消化力により未熟ではあるが保健・医療・福祉のなかでその役割を果たしつつあり,いわゆる「リハビリテーション」は社会的に認知されてきた感がある.
わが国のリハビリテーション医学周辺はこの間どう変遷してきたであろうか.義肢装具士,言語治療士の国家試験制度が制定され,理学・作業療法士の4年生大学,大学院が発足し,関連の職制は固められてきた.しかし,大きな進展がなく,停滞しているのは医師の分野であると言われる.近年各医学部には救急医学,老人医学,形成外科学,総合診療など次々に講座や診療科が開設されている.何故か社会的に認知されているはずのリハビリテーションを支えるリハビリテーション医学は認められず,四半世紀前と比べて大きな進展はない.またわが国の科学研究費や研究員数では米国と肩を並べるほど(人口比)成長しているらしいが,発表論文数はもとより引用される論文も少なく,研究レベルは低い.リハビリテーション医学については数年前まで文部省科研費に細目がなく,最近,リハビリテーション科学として試行されている.このように,いまだに文部行政や医学界からはリハビリテーション医学は認知されていない.
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