Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「サイモン・バーチ」―自身の境遇を肯定的にとらえる思考
二通 諭
1
1千歳市立北進中学校
pp.985
発行日 1999年10月10日
Published Date 1999/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109087
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初夏から秋口にかけてキラリと光る障害者映面の小品が立て続けに公開されたことにより,私としては,本欄3回分の原稿ネタを確保することができたのであり,幸福感あふれる余裕の夏の日々となった.
これらの地味な作品群のなかで目立つ存在といえば,「サイモン・バーチ」(監督/マーク・スティーヴン・ジョンソン).なにしろ原作が『ガープの世界』,『ホテル・ニューハンプシャー』のジョン・アーヴィングなのだから普通じゃない何かが仕込まれているはず.
主人公のサイモン・バーチは1952年生まれの12歳.モルキオ症候群に冒され,身長は1メートルに満たない.親からは疎んじられ,友達からはいじめられるという排他性ムキ出しの60年代世界がそこにあるのだが,サイモンはそれらを普通の風景として受け入れるだけでなく,神に近い人間,つまりは自分を犠牲にして人の役に立つ人間になろうとする.といっても道徳の塊でもない.自分を小バカにする女の子に対しては性的な視線で切り返すしたたかさを持っている.悲観的な材料を集めて自分を苦しくさせるような思考方法ではなく,ユーモラスにやりすごす思考方法を身につけているのだ.
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