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脳卒中や心筋梗塞をはじめとする心血管イベントの発症が早朝に多いことはよく知られており,血圧レベルも夜間から早朝にかけて,いわゆる「モーニングサージ」という上昇を示す1,2).早朝の心血管イベント増加には血圧モーニングサージに加え,早朝に増悪する多くの要因が関与すると考えられるが(図1)3),本稿では,このメカニズムのなかでも血圧モーニングサージを介する経路が重要であることを支持する見解をまとめる.
最近,われわれは日本人高血圧患者を対象とした自治医科大学ABPM研究において,血圧モーニングサージが脳血管障害のリスクになることを報告した4).本研究は明らかな心血管イベントの既往のない高齢者高血圧患者(平均年齢72歳)519名を対象に,ベースライン時に頭部MRIと24時間血圧モニタリング(ABPM)を実施し,心血管イベントの発症を平均41カ月間追跡した.血圧モーニングサージを夜間最低血圧と起床後2時間収縮期血圧との差と定義し,そのレベルが最上位10パーセンタイルをサージ群,他を非サージ群とし,年齢と24時間血圧をマッチさせた.この2群の脳卒中イベントの発生頻度を検討したところ,サージ群の脳卒中相対リスクは2.7であった(p=0.04).さらに,血圧モーニングサージは,夜間血圧下降の著しいextreme-dipperともオーバーラップしていたことから,血圧日内変動異常をCOX回帰分析モデルに加えて検討した(表1).その結果,加齢,24時間血圧ならびに無症候性脳梗塞と独立して,血圧モーニングサージ10mmHgの増加で25%脳卒中リスクが増加していた.また,このリスクは夜間血圧上昇型Riserとも独立していた.以上の成績は,血圧モーニングサージが臓器障害ならびに血圧レベルそのものとは異なるメカニズムで脳卒中リスクになることを示している.
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