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1.はじめに
運動を評価したり,治療としてプログラミンクする場合,我々は可動性(mobility),筋力(strength),持久力(endurance),巧緻性(skill)といった運動の要素を思い浮かべる1).運動負荷機器は,それらを客観的に,しかも動的状態の評価を行うために,臨床的に多く用いられている.
トレッドミルや自転車エルゴメータは,closed kinetic chainによる複合的な関節運動(エルゴメータは純粋にはsemi-closed kinetic chainと言うほうが賢明かもしれない)であり,効率的に運動を行うためには,可動性,筋力,巧緻性のすべてが効率的に統合されていることを必要としている.しかし残念ながら,トレッドミルやエルゴメータでの運動の主な目的は持久力とされる場合がほとんどである.そこで本稿では,ソフトウェアとハードウェアの両面からこれらの負荷機器を,可動性,筋力,巧緻性の考え方をもとに紹介したい.
トレッドミルの運動負荷量はACSMの式2)で算出される負荷要素(スピードと角度)の増大と身体の負荷量には正の相関がある.しかし,最近開発された下り勾配トレッドミルや水中トレッドミルでは,必ずしもその関係が当てはまるとは限らない3,7,8).また,運動の様式(ストライド歩行,後ろ向き歩行など)によっても,その負荷量は変化を示す4-6).したがって,これらの機器をより有効に利用するためには,その機能的な特徴を明確に把握することが必要となる.
エルゴメータに関しては,市販されている半臥位型のエルゴメータを用いた基礎研究11-14)ならびに臨床応用について述べ,更に半臥位型のエルゴメータによるclosed kinetic chainでの筋力評価の可能性についてまとめてみたい16-20).そして最後に,これらを臨床応用する場合の関係を整理して,運動負荷機器利用に関する考え方を提示する.
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