Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ブルトンの『ナジャ』―精神障害者の至適環境
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.185
発行日 1999年2月10日
Published Date 1999/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108910
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『ナジャ』(巌谷國士訳,白水社)は,ブルトンが1928年に発表した作品で,シュールレアリズムを代表する作品の一つとされている.しかし,この作品には,ナジャという若い女性が精神病院に入院させられたことを主人公が非難する部分があるため,精神病院を批判した文学としても読むことができる.
ナジャは,それまでも幻覚や独語などの症状を呈していたのだが,ホテルで常軌を逸した振る舞いをしたのを契機に,ヴォークリューズの精神病院に入院させられたのである.そのことを伝え聞いた主人公は,「鍵穴に鍵を入れてまわすときの耳ざわりな音とか,みじめな庭の眺めとか,こちらがひとりで靴でも磨きたいと思っているときに質問をあびせてくる連中」など,精神病院と外の世界には画然たる違いがあることに思い至る.
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