脳血管障害 True or False
くも膜下出血後の脳血管攣縮による二次的脳梗塞は予測も予防も困難?
菅 貞郎
1
,
河瀬 斌
1
1慶應義塾大学医学部脳神経外科
pp.79-82
発行日 1999年1月10日
Published Date 1999/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108884
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
くも膜下出血は突然の頭痛,意識障害で発症し,50%は死亡し,10~20%に後遺症が残る脳卒中のなかでも予後不良の疾患である1).特に中高年の働き盛りを何の前触れもなく襲う突然死の原因の一つであり,20人/10万人/年の発症をみる2).くも膜下出血の転帰に一番大きな影響を与えているのは出血による脳への直接損傷であるが,初回出血から死を免れ,再出血予防のために出血源の動脈瘤の根治術を受けても,実はもう一つの難関が待ちかまえている.これが脳血管攣縮である.
脳血管攣縮は1951年,Ecker and Riemenschneider3)によってはじめて脳血管撮影で指摘され,本邦でも,くも膜下出血の治療が行われるようになるにつれ,脳血管攣縮が大きな問題となってきた.血管攣縮は脳以外の血管にもさまざまな血管収縮物質の放出によって起こる現象であるが,一般的には即時性一過性である.これに対し,くも膜下出血後に起こる脳血管攣縮は,遅発性持続性で,多くは出血後2週間以内に起き,いつ発生するか予測が困難で,いったん発症すると有効な治療法がなく,攣縮の進行によって二次的に脳梗塞を来して片麻痺,失語などの後遺症を残したり,場合によっては死に至る病態であり,かつては症候性脳血管攣縮はくも膜下出血患者の半数近くに発生した4).
Copyright © 1999, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.