Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「もののけ姫」―よりよき生活の代償としての自然破壊
二通 諭
1
1千歳市立北進中学校
pp.291
発行日 1998年3月10日
Published Date 1998/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108625
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『もののけ姫』(監督/宮崎駿)は,さすがこれまでの興行記録を塗り替えただけあって,本年正月に至っても,なお立ち見がでるほど.絶大なる宮崎ブランドの力を基礎に,子どもは子どもの,大人は大人の感受性で楽しむことができるということ,また,6回も7回もみたという人もいるように作品自体があらゆる点で魅力に富んでいることが,空前のヒットへとつながった.
いわゆる勧善懲悪,善と悪の二項対立といったわかりやすい話ではない.
正義の旗手が,自然保護原理主義者とでもいうべき“もののけ姫”だとしたら,敵対者は,“エボシ御前”である.一方,エボシ御前も正義の人である.砂鉄から作るタタラ製鉄のプラントを持ち,女性差別を否定し,病人や障害者など弱者救済にも自ら汗をかく.女人禁制のタタラ場で働くのは女性であり,武器製作の場で働くのは,全身を包帯で覆った通常の世間から排除されたであろう難病患者・障害者である.
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