Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
『竹取物語』のかぐや姫—うつ病的な側面
高橋 正雄
1
1筑波大学人間系
pp.580
発行日 2015年6月10日
Published Date 2015/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200275
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『竹取物語』(上坂信男全訳注,講談社)については古来,さまざまな解釈がなされていて,上坂信男氏は,物のあわれを知らしめる物語や仏教的教訓物語など,これまで21の説が唱えられているとしたうえで,「現実の渦中にあくせくしている人々に—貴族をも含めて—真の価値ある生き方の回復を訴えかけた寓意的作品」という見方を提起している.
しかし,『竹取物語』の主人公たるかぐや姫には,うつ病を思わせる特徴があるように思われる.たとえば,物語の終盤にある「春の初めより,かくや姫,月の面白う出でたるを見て,常よりも物思ふさまなり」という記載をはじめ,その後にも,「ともすれば,人まにも月を見ては,いみじく泣き給ふ」,「7月15日の月に出で給ひて,せちに物思へる気色なり」とあるなど,月と関係して,抑うつ的で涙もろくなっている様子が記されている.
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