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はじめに
作業療法における神経生理学的あるいは神経発達的アプローチについて,その効用も含めて,できるだけ平易に説明して欲しいという依頼であったが,表記のようなタイトルとした.神経生理学的アプローチは,基本には理学療法のなかの運動療法の理論・手技として,1970年代に入って急速に発展してきたものである.作業療法への応用についてまとめるいう筆者の役割を考え,本論のタイトルを神経筋・感覚統合とした.つまり,中枢神経系障害と身体活動障害に焦点をあてると,神経筋(運動)の知識のみでなく,作業療法の世界で発展してきた感覚統合理論・実践を含むことが必要と考えたからである.
ともあれ,本論をまとめるにあたって,以下の諸課題から指摘したい.
1)神経生理学的あるいは神経発達的アプローチを総合する名称として,「ファシリテーション(促通)技法」としてまとめている文献が多く見かけられる1).外国文献ではタイトルにあるような「神経筋あるいは感覚運動アプローチ」が一般的なようである2-3).また,わが国では,その技法開発者の固有名詞で「○○法」と呼ばれることが多い.したがって,本論ではこれらの用語を必要に応じて用いていくことにする.
2)対象者および障害としては,小児期の中枢神経系障害,成人期の中枢神経系障害,あるいはこの両者を対象とするアプローチがあり,かなり広範囲にわたる知識が要求される.したがって,それぞれのアプローチを解説する紙面的余裕がないため,文献にみられる作業療法への応用を中心に,日本への導入以後の課題について包括的にまとめることにする.
3)作業療法の基本理念(哲学)のとらえ方によっては,この神経生理学的アプローチの意味が変わることが考えられる.過去,作業療法との関係性や応用において,多くの議論を巻き起こし,紆余曲折した歴史がある実践する臨床現場での経験あるいはリハビリテーション理念および体制によって意見が異なる傾向がある.
4)神経生理学的アプローチを用いた作業療法の効果研究は,一般に上記3)の理由によりきわめて少ないのが現状である.
5)それぞれの理論・技法に応じて「研究会」が設立され,啓蒙活動や研究が進められてきているが,そうでないものもあり,アプローチ自体の内容を十分把握せずに使用されることもある.
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