Japanese
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はじめに
日本人は入浴を好む民族で,「清潔」,「気分を和らげる」,「冬季の保温」,「健康」や「疲労の緩和」を目的として,ほぼ毎日入浴している1).入浴方法は国により異なり,日本では湯温40℃~43℃の全身高温浴が,西欧ではサウナ式入浴も採用されている.入浴は生体に大きな変化を与えるため,全身高温入浴やサウナ式入浴における循環動態の変化や体温調節機能における多くの研究が行われており2-7),入浴中の生理的変化としては心拍数,発汗量,皮膚・深部温の上昇が報告されている.日本式全身高温浴では湯温40℃の入浴は血圧を下降させ,43℃の入浴は血圧を上昇させる2-4,8).
入浴による循環器系への負担は大きく,このことは高齢者をはじめ心疾患や脳血管障害者などの血管脆弱性を有する者に対して,入浴は悪影響を及ぼす可能性を示唆する.疫学的にも,入浴が60歳以上の高齢者において心臓性突然死の危険因子の一つであること9),栃木県では入浴中の事故死の増加が,特に冬季に顕著であること10),東京都監察医務院で扱われた東京23区における2年間(1987~88)の異常死体のうち5.3%が入浴中または入浴直後の脳卒中や心筋梗塞が原因であったこと11),などが報告され,この仮説を裏付けている.
一方,最近では安全な入浴方法に関する研究も行われており10-12),入浴時の湯温と浴室環境温との温度差を少なくすること,入浴における脱水を防ぐことなどが提案されている.しかしながら,入浴環境や入浴方法には個人の嗜好が強く反映され,提案された安全な入浴方法が複雑であることも相まって必ずしも実行されていないため,より簡便な「安全な入浴方法」が望まれる.そこで今回,入浴時における入浴者の主観的感覚である心理的変化と生理的変化を同時に測定し,入浴時の心理的変化の申告が安全な入浴方法の指標となりうるかを検討した.
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