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はじめに
障害者を対象にした入浴用機器には,自助具や簡単な備品から,施設用の大規模な入浴装置まで多種類のものがある.表1は飯村の論文からの引用であるが1),家庭用としては浴槽,入浴用リフター,手すり,シート,マットなどが利用されている.
これらの入浴用機器を家庭で用いる場合の目的は,①安全性の確保,②入浴動作の自立の促進,③介助量の軽減などに大別される.すなわち,入浴動作が自立している場合も含めて,浴室内での安全性への配慮は大切であろうし,各種機器の使用や,ちょっとした工夫によって入浴動作が可能になることもある.運動能力が低く,入浴行為に多くの介助を要する場合,介助者の負担の軽減が重要な問題となる.
家庭での入浴用機器の適応を考える際,運動能力による入浴方法の検討や浴室を中心とした居住環境への配慮は不可欠であるが,対象者の年齢,予後,意欲,あるいは家庭の経済力,介助力などの条件によって異なった考え方や対応が必要となってくる.すなわち,対象者を取り巻く諸条件によって,①比較的大がかりな家屋改造を中心に入浴環境の整備を行うのか,②簡単な備品の設置と入浴方法の検討を中心に入浴動作の改善を図るのか,③巡回入浴サービスや施設の入浴サービスなどの利用を中心に考えるのかなど,異なる立場での対応が考えられる.例えば,よく計画された住宅改造を行い,適切な機器を有効に利用することにより,四肢麻痺者でも家庭での入浴を日常的に行っている例が少なくない.一方,片麻痺者では,適当な手すりや入浴用シートの工夫だけで入浴動作が可能になる場合が多く,大がかりな浴室の改造などは必要としないのが普通である.介助力不足などの事情で定期的な福祉の入浴サービスと家庭でのシャワーや清拭を併用している例は比較的多い.
本稿では,入浴用機器の一つ一つを詳細に紹介するのは不可能であるが,入浴機器の使用目的に沿ってコンパクトに分かりやすく解説することに努める.入浴用機器は,入浴方法や居住環境への配慮抜きで用いられたとしたら,その有用性は半減する.本稿の後半では,片麻痺者や四肢麻痺者の家庭での入浴用機器の利用のポイントと問題点を考えてみる.
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