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はじめに
この講座の第1回1)に筆者らの1人(上田)が述べたように,日常生活動作(ADL)では「できるADL」(評価・訓練時の能力)ではなく,「しているADL」(実生活で実行していること)を重視しなければならない.ADL評価・訓練の究極の目的は,以前にも書いたことがあるように,「できるADL」(最大限能力)と「しているADL」の両者を正確にとらえた上で,それらを総合して,さらに一段高い,将来「(実行)する(ようになる)ADL」(自宅,社会に復帰した場合に実行するであろうもの)を判断し,それに向けての訓練・指導プログラムを進めていくところにあるのである2).
今回のテーマは整容・入浴動作であるが,この分野では,他の身のまわり動作に比して以上のような考えに立ったアプローチは不十分であったといえよう.
我々は現在,①QOLの向上に向けたADL能力向上1)の重視,ただしこの場台のADLとは身のまわり動作のみではなく,より広義の能力障害全般の意味とする(以下同じ),②目標指向的アプローチ3),すなわちアプローチすべき能力障害レベルの問題は,QOL向上を念頭において優先順位を決め,機能障害レベルでの機能回復訓練も,このQOL向上のためのADL向上にとって必要な機能の改善を優先させること,③実生活上で実行しているADL能力の重視,④廃用症候群の予防・改善,そのための生活全般の活発化の重視,という4点を基本的な考え方とした積極的リハビリテーション・プログラム4,5)を確立しようと努力している.ADLについても「しているADL」と「できるADL」の差に関する調査をくり返し行いつつ,その結果に立ってADLプログラムを改善し,実行率の向上を確立するなどの努力をはらってきた.その過程で整容・入浴に関して種々の興味ある知見が得られ,具体的なアプローチ技法についての経験・ノウハウも蓄積されてきたので,以下それについて述べたい.なお,ADLアプローチ全般についての基本的考え方については既出の論文4,5)を御参照いただきたい.
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