巻頭言
「障害者プラン」は策定されたけれど……
小川 孟
1
1横浜市リハビリテーション事業団
pp.403
発行日 1997年5月10日
Published Date 1997/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108367
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国が策定した「障害者プラン」は2年度目に入ったが,このプランが示す2002年の日本は,障害者にとってどの程度住みやすい国になるのだろうか.その具体的イメージは必ずしもはっきりと浮かんではこない.プランには緊急に整備すべき目標が列挙されているが,これは日本全国での話しであって,例えば,幅の広い歩道を13万kmにすると言われても,人口5万人とか30万人を単位として事業を実施すると言われても,障害をもつ人びとが自分の住む町や村がどう変わるかを想像するのは難しい.
だから,「市町村障害者計画」の策定指針まで出して,障害をもつ人びとのもっとも身近な行政である市町村が,地域の実情を踏まえた計画を策定するよう期待しているんです,と国は言うであろう.ところがその期待に反して策定状況は,全国3,255市町村のうち,計画策定済みと策定中を合わせても,約1割強にしか達していないという報告がある.このような状況について,市町村の責任を追求したり,熱意のなさを批判するのは容易であろうが,これまで市町村が障害者施策に取り組めるような条件を整えるために,国はどれだけのことをしてきたかを考えてみる必要があるのではないだろうか.とにかく,国が掲げた計画が実践されるのは障害をもつ人々が生活している地域社会である.国,都道府県は全力を挙げて市町村計画の策定と実施を支援して欲しいものである.
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