Japanese
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講座 航空宇宙医学における廃用症候群
5.宇宙環境における平衡感覚
Equilibrium Sensation in Space.
石井 正則
1,2
Masanori Ishii
1,2
1東京厚生年金病院耳鼻咽喉科
2宇宙開発事業団・招聘開発部
1Department of Otorhinolaryngology, Tokyo Kōsei-nenkin Hospital
キーワード:
宇宙酔い
,
平衡機能
,
地球酔い
Keyword:
宇宙酔い
,
平衡機能
,
地球酔い
pp.437-441
発行日 1997年5月10日
Published Date 1997/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108374
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はじめに
アポロ計画で人類が月に到達して,はや20年以上が過ぎ,いまや宇宙ステーションの建設が始まろうとしている.そして,いままでの1~2週間前後のスペースシャトルでの宇宙滞在が3~6か月と長期になる.したがって,今後は長期間の無重力飛行により宇宙飛行士に起こる廃用症候群が医学的に大きな意味を持つと考えられる.
廃用症候群は,骨,筋肉,循環器などが主体として変化が起こると考えられているが,中枢神経系の機能にもその症状が出現する.とくに平衡機能は,地上では重力のある環境で人間が2足歩行を行ううえで成立している機能であるが,宇宙環境では,その重力が消失するために平衡機能に大きな変化が生じる.それは,人間が宇宙という重力のない環境に適応できるのかということを知るためにも大切な研究対象である.
そのなかで,宇宙酔いは,人間が無重力の環境で生じる代表的な初期症状ともいえる.そこで,今回,宇宙医学における廃用症候群のなかで,神経生理学的変化として平衡感覚の変化や宇宙酔いなどを中心に述べてみる.
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