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はじめに
等尺性筋力と重錘負荷時の関節運動の速度は相関する傾向にある.しかし,同一筋力を発揮できる者同士でも優れたスプリンターやジャンパーにおいては筋仕事率(power)が大きく,高い筋収縮速度を持つ者が存在するのも事実である1).つまり,筋力とパフォーマンスとの兼ね合いを考えるのであれば,静的な等尺性筋力を計測しただけでは得られない,筋の動的な特性(以下,動特性)の評価が必要である.筋の動特性とは,力産出装置としてみた筋の神経入力に対する応答特性のことである2).
反応時間(reaction time;RT),および運動開始から力が最高値に達するまでの時間である力立ち上がり時間2)(time to peak force;TPF)は,その計測が簡便で臨床的な筋機能の評価に有用である.RTは刺激の提示から主動筋の活動開始までの時間である筋電図反応時間(premotor reaction time;RMT)と,主動作筋の活動開始から運動開始までの電気力学的遅延3)(electromechanical delay,または運動反応時間;EMD)に分けられる.このうち,EMDは非観血的に随意収縮という過程で筋線維組成比を推定し得る3)パラメータとして有効である.
力のピーク値をTPFで割れば力発生のスピード,すなわち力発生率(rate of force development;RFD)が求められる.RFDは筋の力学的特性,筋線維組成の特徴を反映する2)と考える.これらは,筋の動特性を把握するのに有効である.
筋の動特性を評価する手段として一般的なものには,等運動性筋力の評価がある.等運動性筋力での訓練は等張性筋力や等尺性筋力と比較して筋力増強,パフォーマンス向上共にその有効性が確認されている4-7).また,角速度を変化させたり,トルクカーブの分析8)を行うことで筋機能の質的評価も可能となる.定説まで至っていないが,等運動性筋力と筋のtype Ⅱ線維組成比(以下,%type Ⅱ線維)は相関する3)と述べた報告が多い.
以上をまとめて,筋線維組成の見地から筋の動特性を反映すると考えられるRTまたはTPFと,等運動性筋力の間には関連があると仮定した.そこで,本研究は健常者の膝関節伸展筋を対象に,EMD,TPF,RFDのいずれかと等運動性筋力が相関関係にあることを証明することが目的である.
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