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はじめに
体幹筋は体幹の運動と安定化に寄与しており,腰椎部への負荷を減少させる働きをしている1),したがって体幹筋力が低下すると体幹の安定が失われ,腰椎部への負荷が増加することで腰痛の原因になると言われており2),腰痛症例に対して体幹筋力の強化訓練が広く施行されている.また,その訓練が腰痛の治療および予防に効果があると報告されている3).
しかし実際に体幹筋力を測定したこれまでの報告では,腰痛症例では体幹筋力が低下しているという報告4-6)と,必ずしも低下していないという報告7,8)があり,腰痛と体幹筋力との関係について矛盾する結果が得られている.その理由として体幹筋力の評価が困難なことが考えられる.すなわち体幹では,四肢の場合と異なり,同一被検者で健側と患側を比較することが不可能であるため,正常例と比較する必要がある6).その際には各被検者の体格に合わせてポジショニングをして身体を固定をする必要があり9),測定条件を同一にすることは易しくない.さらに腰痛症例では疼痛もしくは疼痛に対する恐怖などの主観的因子が筋力の測定に影響するため4,6,10-12),その測定結果から体幹筋力を客観的に評価することは困難であろう.
一方,これらの主観的因子に影響を受けない筋力の評価方法として,体幹の横断画像上で筋の断面積を検討する方法がある.しかし,これまでの報告では,腰痛症例では体幹筋が萎縮しているという報告13-16)と,萎縮していないという報告17,18)があり,一致した見解は得られていない.したがって体幹筋力の強化訓練を処方するにあたっての科学的基礎データには一致した見解が得られておらず,腰痛症における体幹筋の病態が明らかであるとはいえないのが現状である.
そこで筆者らは体幹筋力の強化訓練が必要だと考えられる腰痛症例を対象にして,各被検者の体格に合わせてポジショニングができ,骨盤,下肢および上半身を強固に固定できる測定装置を用いて体幹の筋力を測定した.同時に体幹のMRI横断画像を利用して体幹筋の断面積を計測した.そして,それぞれの値を腰痛症例と健常例で比較し,次いで筋力と筋断面積との関係を検討した.
本研究の目的はこれらの方法で腰痛症における体幹筋の病態を明らかにすることであり,できれば体幹筋力の強化訓練における基礎データを得ることである.
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