Japanese
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特集 多発性脳梗塞のリハビリテーション
成因と病態
Pathophysiology of Multiple Cerebral Infarctions.
畑 隆志
1
Takashi Hata
1
1東海大学医学部神経内科
1Department of Neurology, School of Medicine, Tokai University
キーワード:
脳梗塞(再発)
,
無症候性脳梗塞
,
脳血管性痴呆
Keyword:
脳梗塞(再発)
,
無症候性脳梗塞
,
脳血管性痴呆
pp.499-505
発行日 1996年6月10日
Published Date 1996/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108120
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はじめに
多発性脳梗塞の定義は明らかではない.梗塞巣がいくつ以上あれば多発性梗塞と呼ぶかについてはもちろん決まりがないし,脳梗塞の診断方法についても規定はない.脳梗塞の診断は,剖検で確認された病理学的なものか,MRIあるいはCTで診断された放射線学的なものか,臨床的な病歴や神経徴候で診断された神経学的なものかによって,その意味するところは随分異なるように思える.
また多発性脳梗塞になるには表1に示すようないくつかのパターンがある.①まず臨床的に再発性の脳梗塞であれば,それは多発性梗塞といえる.②初めての発作であるにもかかわらず責任病巣以外に陳旧性(稀には同時性)の梗塞病巣を認める,つまり症候性脳梗塞患者に無症候性脳梗塞が認められたものも多発性脳梗塞である.③また,脳梗塞の明らかな発作はないが,痴呆やパーキンソン症候群,仮性球麻痺などの症候が徐々に認められるようになり,画像診断で多発性の虚血性病巣が確認されたものも多発性脳梗塞である.④さらには,全く健康な老人や脳ドック受診者などで認められた無症候性の脳梗塞の多発や,他疾患で亡くなられた患者の剖検脳に認められた複数の脳梗塞巣も多発性脳梗塞と考えられる.
また,同じ多発性の脳梗塞病巣でも,心原性塞栓症の多発,皮質枝梗塞の多発,境界領域梗塞の多発,多発性ラクナなどは,それぞれ成因も病態
も全く異なる.したがって多発性脳梗塞の成因と病態を一括して論じることは困難である.本稿では,脳梗塞の再発の問題,無症候性脳梗塞の成因と病態,さらには多発性脳梗塞が脳血管性痴呆に結びつく機序について解説してみたい.
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