Japanese
English
特集 脳卒中のリハビリテーション
Ⅳ.高次脳機能障害の諸問題
脳血管性痴呆とその他の精神症状
Cerebrovascular Dementia and Some Related Mental Symptoms.
江藤 文夫
1
Fumio Eto
1
1東大病院老人科
1Department of Geriatrics, University of Tokyo Hospital.
キーワード:
脳血管性痴呆
,
長期入院
,
ADL
Keyword:
脳血管性痴呆
,
長期入院
,
ADL
pp.173-180
発行日 1982年1月10日
Published Date 1982/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552104688
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
脳卒中のリハビリテーションの阻害因子が論じられる時,脳の損傷そのものに起因する一次的因子として最も重大なものは痴呆症候群と,これと合併してみられることの多い自発性の低下その他の精神障害であろう1).しかし脳血管障害による痴呆に関する臨床的分析は比較的少なく,理解も不足していることから早期リハビリテーションとそのための早期診断が強調される中で,痴呆の診断の下に回復への努力が絶たれる危惧が生じる.痴呆と誤られやすいものの例として失認,失行,失語といった脳の高次機能障害があげられる.失語は痴呆と誤られることはないであろうが,言語療法の有効性が認められるものの,現実の社会復帰については失語症の改善度と必ずしも一致しない2).同様に,痴呆はimpairmentやdisabilityにおいては重篤でほとんど改善を期待しえないものであるが,handicapにおいては改善のための介入余地が大きいものである.リハビリテーションの阻害因子としては最大のもののひとつであっても,決して適応外の障害ではなく,むしろ敢えて必要性の高いもののひとつであると言えよう.
痴呆は精神医学,老年医学,神経学,心理学などの境界領域に位置し,未知の問題が多いが,老年人口の増加とともに痴呆患者の比率も増大し,臨床的にも重要であり興味も高まりつつあることから各分野での貴重な文献が数多く生まれている3).それらを総説することは本稿の目的ではないが,リハビリテーションにおける問題について,われわれの経験を中心に文献的考察を加えてみたい.
Copyright © 1982, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.