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はじめに
体育・スポーツの対象および研究領域は多岐にわたるが,動作分析的手法を利用するのは,主に基礎的領域に属するスポーツバイオメカニクス,指導方法などを扱う運動方法学,競技スポーツを対象とするコーチ学などであろう.
図1は,体育・スポーツにおける動作分析の利用を,運動パフォーマンス(一流選手の競技成績のみでなく,体育授業における運動の学習や習熟なども含む)の向上をねらいとする場合について示したものである.
体育・スポーツにおける動作分析の大きなねらいは,運動を客観的に観察することにある.体育・スポーツでは,運動を肉眼でみた感じ,リズム,バランスなどをもとに,運動を全体的にとらえることを重視する.
しかし,パフォーマンスを向上させるためには,客観的な観察を行い,選手や運動者の動作を分析する必要がある.
運動を客観的に分析して得られる基礎的資料は,動作の診断と評価に利用され,さらに蓄積されているデータ(この中には,過去のデータや一流選手のデータなどが含まれる)と比較することによって制限要因が明らかになる.次に動作の改善や習得の方法を選択し,動きのトレーニングを行う.ここでは,動作分析の知見に基づいて開発された効果的なトレーニング法を利用することになるであろう.
また,動作分析による知見は,身体運動のシミュレーション手法の開発,スポーツ用具の開発,運動障害の原因の究明にも大いに役立つ.さらに,これらの科学的知見が蓄積され,基礎的検証や実践的検証を経て,運動技術や動作メカニズムの解明,動作の原理や原則の究明に至ることもあろう.この他,動きの発育発達,さらに加齢に伴う動きの変容をとらえることも動作分析の大きな役割である.
ここでは,ランニングを例にして,体育・スポーツの分野における動作分析の利用について述べることにする.
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