Sweet Spot 美術に見る障害者
神官ルマとプント国王妃エティの肖像
明石 謙
1
1川崎医科大学リハビリテーション科
pp.349
発行日 1995年4月10日
Published Date 1995/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552107845
- 有料閲覧
- 文献概要
恐らく標題だけでは何事かと思われる方もあるでしょう.まずルマは紀元前約2500年の人で,エジプトの古王国の時代,つまりエジプト国王達がしきりにピラミッドを作っていた頃のシリアの神アスタルテの神殿の門番役の神官でした.アスタルテは障害者の神で治療者でもあったと言われており,その肖像は後ろに神への供物を持つ妻のアマオ,改写図では省略していますが息子のプタンヘブの彫刻もあります.ポリオ(急性脊髄前角炎)の後遺症と杖の記録としては最も古いものとされています.大きさはB5程度で一側下肢の筋萎縮と尖足がはっきりと識別でき,時代と生存の可能性を考えると,その診断に間違いはないでしょう.
ポリオは消化管のウイルス感染で発病し,感冒様の症状と消化器症状,それに麻痺が起こる部分の激しい痛みを感じます.熱が下がり痛みが取れるとその部分の筋の弛緩性麻麻痺が残ります.予防には経口ワクチンが著効を示し.現在では非常に少なくなりました(図1).CopenhagenのNy-Carlsberg彫刻館に展示してあります.
Copyright © 1995, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.