巻頭言
障害者を診るとは
木村 伸也
1
1東京大学医学部附属病院リハビリテーション部
pp.363
発行日 1994年5月10日
Published Date 1994/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552107604
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リハビリテーション医学の他の臨床医学分野にはない優位性は,狭い意味の治療にとどまらず,障害者のより人間らしい生き方を追求することにある.最近の医療技術の進歩に伴ってリハビリテーションの対象となる疾患・障害は拡大し,急性期やレスピレーター管理下の進行した神経筋疾患,癌・白血病等の悪性腫瘍患者といった今までになくリスクの高い疾患と重度の障害が共存する障害者が多くなっている.またリハビリテーション医学の側でも診断・評価・治療の技術が進歩し,重症・重度患者のリハビリテーションを行う力量を蓄えてきたこともこの対象者の拡大の大きな要因である.このような例に対しては,より短い時間の中で,より狭い運動負荷の許容幅の中で,より切迫した心理・社会的問題に直面しながらリハビリテーションを行うことが求められ,上記のリハビリテーション医学の大きな目標を追求することが一層困難に見えることが少なくない.
ここ数年の私自身の「ハイリスク・体力消耗状態」のリハビリテーションの経験を通じて,障害者をみる姿勢が鋭く問いなおされてきた.こういう新しい,困難な障害・障害者を目の前にした今こそ,リハビリテーション医学は障害者の人間らしい生き方を目指すものであるということをもう一度深く肝に銘ずるべきと考える.そこで障害と障害者をリハビリテーション医学の立場から診る時に何が重要であるのかを考えてみたい.
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