Japanese
English
特集 高次脳機能障害とADL
高次脳障害患者における自動車運転の問題点
Some Probrems of Driving for the Patient with Higher Brain Function Disorders.
前田 守
1
,
窪田 俊夫
1
,
前田 三和子
1
,
吉原 博
1
,
紅野 勉
1
,
梶原 幸信
1
,
稲葉 敏樹
1
Mamoru Maeda
1
,
Toshio Kubota
1
,
Miwako Maeda
1
,
Hiroshi Yoshiwara
1
,
Tsutomu Kohno
1
,
Yukinobu Kajiwara
1
,
Toshiki Inaba
1
1中伊豆リハビリテーションセンター
1Nakaizu Rehabilitation Center
キーワード:
脳血管障害
,
高次脳機能障害
,
自動車運転
Keyword:
脳血管障害
,
高次脳機能障害
,
自動車運転
pp.127-132
発行日 1994年2月10日
Published Date 1994/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552107547
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はじめに
片麻痺患者が自動車の運転を希望する場合,道路交通法施行令に定められている精神,身体障害の「欠格事由」を上回る状態であれば,運転の実施は基本的に可能であり,今日では発病後も継続して運転しているケースが増える傾向にあるといわれている1).この背景には障害者自身の運転に対する高いニーズがあることや,ノーマライゼイションにみる社会的理解の向上,数次にわたる法の改正,さらには自動車そのものの性能が障害者にとって便利になったこと,そして障害を補うための運転用補助装置が開発,普及したことなどが考えられよう2-4).車の運転によって社会参加の意欲が高まり,自立を促進できるきっかけになることから,自動車運転能力の再獲得は重要なプログラムとして位置づけられるものと思われる.
しかし,車の運転は「頭でするもの」といわれているように,単なる操作能力よりも認知や判断など,知的機能が重要とされることから,高次脳機能障害の合併が推測される場合,治療者側に立てば患者の安全性や交通加害者になることの危惧を持つことになり,他方,患者側に立てばそのもたらす利益から肯定的な考えになるなど,乗っていいのか,悪いのか,許されるのか,許されるべきでないのかなど,葛藤を生ずる場合が少なくない5).
高次脳機能障害患者の自動車運転については,神経心理学的立場からの検討はむしろこれから,という段階にあるように思われる.
本稿では今日までの研究動向や医学的,法律的問題などについて述べ,さらに問題の具体化を図るため,われわれの経験した症例を紹介したい.
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