わが国の高齢者の実態

Functional Capacity and Life in the Japanese Elderly.

はじめに

　与えられたテーマは，わが国の高齢社会の実態である．このテーマに応えるためには，人口の動態や静態，その他の人口学的データ，社会福祉や医療制度・医療費の問題など，整理しておくべき項目は多い．また，疾病や障害の有症率や受療率も基礎的データとして整理しなければならない．

　しかし，これらのデータに関しては，国レベルの調査報告書，さまざまな白書によくまとめられている．むしろ，高齢社会の実態というとき，そのような高齢者自身の外側の問題を論ずれば事足りると考えてしまうところに問題がある．そして，高齢者の健康を論ずるときには，一般集団（高齢社会）の中から，疾病や障害を切り取ってその割合の大小を論ずることに終始しがちであるところにも問題がある．

　本論では，そのような項目を思い切って割愛し，高齢者の生活および生活機能，そしてどのように一生を終えようとしているかについて論じてみたい．当然，そのような問題に関する全国の代表性のあるデータが完備しているわけではないので，筆者の行っているフィールドワークの経験で補充しなければならない．