Japanese
English
講座 子どもの神経心理学
3.神経心理学的検査
Neuropsychological Assessments for Children.
杉山 登志郎
1
Toshiro Sugiyama
1
1名古屋大学医学部精神科
1Department of Psychiatry, Nagoya University School of Medicine
キーワード:
神経心理学
,
神経心理学的検査
,
児童
,
巣症状
Keyword:
神経心理学
,
神経心理学的検査
,
児童
,
巣症状
pp.786-794
発行日 1993年9月10日
Published Date 1993/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552107446
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
神経心理学的検査の意味
児童における神経心理学的所見がどのような意義を有するのかという問題は,前回までに既に詳述されているが,神経心理学的な検査の意味を考察するために,もう一度簡略に振り返ってみたい.
神経心理学は本来は,脳の分業の在り方に関する知識の集積と研究を主とする科学である31,32).しかし脳の局所の障害は,短直にその部位がつかさどる脳の機能の障害になるとは限らない.脳の機能分化は多くの場合,直列系と並列系との2重構造をもち,ある系に障害が生じても,バイパスによる代償形成が可能であり,処理時間の遅延がもたらされたとしても,その系の完全な機能不全は生じにくい仕組みとなっている.しかしその一方で,一つの系の障害は,そこに投射線維を送る他の系にも2次的な障害を引き起こすために,脳全体の機能に多少なりとも影響を与えることとなる6).児童においてはこのような事情は著しく,言語中枢のある優位半球の完全な挫滅からの回復など,成人では考えられない活発な代償形成機能が見られることが知られているが,`他方,難治性の部分てんかんにおいて外科的半球切除によって,行動障害のみならず知的な能力までが向上する場合があることに示されるように,局所の障害が脳全体の機能に深刻な影響を引き起こしている場合もあることが知られている28).
Copyright © 1993, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.