Sweet Spot 昔ばなしに見るリハビリテーション
「花咲か爺さん」―ぼけ老人へのケアとリハビリテーション
村田 信男
1
1東京都中部総合精神保健センター
pp.705
発行日 1993年8月10日
Published Date 1993/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552107429
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「むかしむかし,あるところに……があったとさ」.昔ばなしの出だしの文句は大体このような言葉で始まるものが多い.この表現は,時間と場所をあいまいにし,さらに伝聞(…あったとさ)の形式をとっているが,これは具体的事例を一般化し,個別性を普遍性に転化させるのに有効なやり方である.
このような全体の“ほやかし”により現実からの距離がとれ,辛く悲しい具体的事例も戯画化され,安心して聞くことができる.「わが国の昔話は殆どが農民を主体とする庶民層の間に保存され語られてきましたので,その生活が主要な内容となっています」1)ということだが,このような昔ばなしの成立過程を考えると,昔の人の生活ぶりとそこで生じたいろいろなことが昔ばなしとして一般化されて語り継がれ,それ故,時代を越えた共感を持てるのではなかろうか.「花咲か爺さん」の話もその1例であり,現代の高齢化社会に通じるものがあると考える.
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