クリニック・アイ
さくらと爺さん
木島 昻
1
1小児科
pp.100
発行日 1968年2月1日
Published Date 1968/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913890
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さくらの話など,まだ早い。しかし,“梅は咲いたか,さくらはまだかいな”立春を過ぎると,さくらの花の咲くのが待ちどおしい。長い,寒い冬のあとだけにいっそう。そしていったん咲いてしまえば,こんどはあっけなく散ってしまう生命に,その風情をあわれんで,人間の生涯を織り込んで考えてしまう。ほんに,花の生命は短くて……である。
「散らば散れ咲く日もあろう山ざくら」なにやらあわれで勇ましい句である。20数年前のあの戦争に,若い生命を南海に散らせた特攻隊の勇士の句,それとも自分の主義思想が世にいれられず,ついにこの世を去った大政治家の辞世の句か?じつは,サザエさんの漫画(昨年1月30日,朝日新聞朝刊)の中の句である。落選を予想していた立候補者が,かねて準備していた,腰折れ(へたな詩歌)を一つと前おきして,と説明のあるこの一句,頭のはげた落選候補者の漫画の姿とマッチして今も覚えている。
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