書評
佐藤久夫 著―障害構造論入門―ハンディキャップ克服のために
中村 隆一
1
1東北大学医学部附属病院鳴子分院
pp.702
発行日 1993年8月10日
Published Date 1993/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552107426
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本書は世界保健機関(WHO)が1980年に出版した「WHO国際障害分類試案(仮訳)」(厚生省大臣官房統計情報部)以来,盛んになった「障害の3つのレベル」や「障害の階層」を巡っての考え方・理論を障害構造論と呼び,障害の分類にかかわる複数の提案とその批判とを紹介している.「序論:障害の構造的理解ということ」に,「WHO国際障害分類試案への道」,「WHO国際障害分類試案」,「国際障害分類試案の普及と活用」,「国際障害分類試案への批判と修正動向」,「カナダモデル:ハンディキャップ発生プロセス」,「上田敏氏の障害構造論」の6章が続く.序論において,著者は障害者のかかえる困難を解決するという問題意識から,障害を医学的事象,困難を社会的問題と読み替え,その解決法に,①障害の医学的な予防と治療,②障害の影響を制限し困難を予防する,があると推論する.そして障害と困難との関連を構造の視点から捕らえようとする.著者の問題意識は,この段階で既にリハビリテーション医学で利用されている障害モデルを越えているように思える.その姿勢が複数モデル(国際障害分類,カナダモデル,上田理論)を中立的に紹介するのには有利になっているが,著者自身のモデルを提示するという段階には至らしめなかったのかも知れない.
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