書評
ドナR. ファルヴォ 著,津田 司 監訳―上手な患者教育の方法
塚本 玲三
1
1名古屋徳洲会病院
pp.44
発行日 1993年1月10日
Published Date 1993/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552107271
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「アメリカの臨床医学は,驚くほど奥行きが深い」というのが,私の本書の読後感である.
最近,わが国でも患者教育が日常の診療においてきわめて重要であることがやっと認識されるようになった.しかし,一般に患者教育は医療者と患者を結び付けるアートで,個々の医療者の人格と感性に依存すると考えられている.本書の著者であるファルヴォ博士は,ベテランの看護婦であり,かつ臨床心理療法士で,長年の経験と深い洞察力に基づいて,患者教育の理論と方法について本書を著している.博士は従来のアートとしての患者教育を,患者教育学という一つの学問的体系を見事に作り上げることによって,より客観性に富むサイエンスの分野に移し変えたと言っても過言ではなかろう.約25年前,私がアメリカで臨床に従事している時,Weed博士によって初めてPOSが臨床の現場に導入され,病歴中のpatient profileが病気の罹患や経過に重要な意義をもつことが強制されるようになった.その2~3年後には,精神科以外の一般臨床の現場にも多数の心理療法士を見かけるようになり,医師と症例検討会を行うようになった.これが行動医学の普遍化の始まりである.本書は,行動医学の概念を根底において患者教育の実際を理論的に述べている.
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