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Perspective●展望
「100%正しい忠告は役に立たない」という忠告は役に立つか?
What should be physician's advices to patients?
石井 均
1
1天理よろづ相談所病院内分泌内科
pp.8-9
発行日 2008年1月15日
Published Date 2008/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1415100769
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- Abstract 文献概要
医師からのアドバイスがあまり役に立っていないという研究がある.高血圧患者に対するライフスタイル改善アドバイスが患者にとってどの程度有効であったかというイギリスの調査である.この報告によると,最も多く50%の患者が覚えていたのは,塩分制限というアドバイスであったが,実行に移したのはそのうちの20%であった.その他に低脂肪食,運動,禁煙,減量,節酒,が挙げられているが,それらを覚えていた人の割合は塩分制限よりさらに低く,実行に移した率は同程度であった.全体としてみたとき,アドバイスが行動変化につながった有効率は10%以下で,節酒に至っては2%であった.そこからの結論は,一方向的な指示は行動変化へと導く有効性が低いというものであった.
ともかく正しいこと,しかも,100%正しいことを言うのが好きな人がいる.(中略).煙草を吸っている人には,「煙草は健康を害します」と言う.何しろ,誰がいつどこで聞いても正しいことを言うので,言われた方としては,「はい」と聞くか,無茶苦茶でも言うより仕方がない.(中略)もちろん,正しいことを言ってはいけないなどということはない.しかし,それはまず役に立たないことくらいは知っておくべきである.例えば,野球のコーチが打席に入る選手に向かって「ヒットを打て」と言えば,これは100%正しいことだが,まず役に立つ忠告ではない.
河合隼雄.「100%正しい忠告はまず役に立たない」.こころの処方箋.新潮文庫
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