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はじめに
電気刺激には種々の臨床的応用がある.その中で機能的電気刺激(functional electrical stimulation,FES)とは機能的に有用な動きを作り出すことを目的に末梢神経あるいは直接筋肉を電気刺激し制御するものである,リハビリテーションの分野では脳血管障害,脊髄損傷などの中枢性麻痺肢が対象となり,麻痺による能力低下の補正が試みられる.最初の臨床応用は,1961年Libersonらによってfunctional electrotherapyの名で片麻痺患者の足関節背屈目的の腓骨神経刺激として報告されだ13).その後,対麻痺の下肢刺激による歩行,四肢麻痺および片麻痺における手指動作などにも応用された.
筋の収縮力は筋線維の数とその筋の発火頻度により規定される.電気刺激においても同様で筋収縮力の増加は刺激強度を強くし収縮に参加する筋数を増すか,あるいは刺激頻度を高くすることによって得られる.脊髄前核細胞に由来するインパルス発火頻度は通常20Hz前後であるが,運動単位別にその発火は完全には同期しない.電気刺激では当然のことながら,発火は同期するため特に15Hz以下の低頻度刺激の際には弱い収縮とはなっても滑らかな動きとはなり得ない21).また生理的な状況下では力を増していくと小径神経線維―赤筋から発火し始め,大径神経線維―白筋が最後に収縮に加わる.一方,電気刺激では弱い収縮力を得るにも大径神経線維―白筋系が発火されるため,筋疲労を生じやすい.以上の理由で多くのFESは刺激頻度は20Hz前後の定頻度,パルス幅も0.1~0.2msecに固定して,電流値を増減して筋収縮を制御する方法をとっている12).
筋疲労に加えて電気刺激における別の問題として痛みがある.脊髄の完全損傷などで感覚脱失状態にある場合を除いて,特に表面電極による筋への直接刺激では疼痛を生じる.疼痛軽減の手段として電極面積を大きくすることと刺激電流を初期漸増パターンにする方法が有効である.電極はより少ない電流で収縮を生じる筋上の点(モーターポイント)に置かれるが,表面電極以外にもワイヤー電極(SUS 316L,テフロン初覆ステンレス線)が用いられることもある.特に上肢のFESでは筋束自体が小さく,把持などの微妙な動作に際しては多筋の複合的制御をしなければならないため,ワイヤー電極が留置されることが多い.各々の筋における刺激のタイミングとその強度は目的とする動作毎によって異なり,そのコントロールは難しい.そのため健常筋で各種動作の筋電解析を行ったうえで,そのパターンをテンプレートとしたコンピュータによる多チャンネル刺激制御が利用される4,18).
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