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スライドづくりを例にとれば,私が医者になった10年ちょっと前,それは手仕事で大変だった.グラフのあるスライドなら,レタリングセットなどを使って一晩で2,3枚というペースであった.それが,パソコンの進歩で,まずきれいな活字を印刷できるようになった.次にデータさえあればどんなグラフでもつくってくれるようになった.そして今ではカラー見本まで用意してくれ,3次元グラフを盛り込んだカラースライドが画面操作だけで数分のうちに自動作成できるようになった.さらに動的データでさえ手軽に扱えるようになりつつある.一方,データ整理を考えれば,多変量解析など一昔前は大型コンピュータが行っていた統計を30万円のパソコンで研究者自ら電卓計算のごとく手軽にできるようになり,データと研究計画は研究者の頭脳の中で非常にinteractiveになった.
リハビリテーション医学領域で働く者にとって,扱うデータの多面的,空間的特徴が今までその理解の発展を阻害する大きな因子になっていた.言葉だけで歩行障害など空間的・時間的問題を表現することは難しいのだ.そこで歩行分析装置などがあるのだが,機器が高価で,かつデータの互換性がなく一般化しにくかった.しかし,今後はフォースプレートなど入力機器さえあればパソコンの汎用ソフトを用いてこれを直接処理し,動画的データのまま検定かつ呈示できるようになるのだ.多くの施設において安価で互換性のあるデータがつくれるようになれば学問の急速な発展につながるだろう.また恐らく,そのプレゼンテーションの方法も数年のうちに動画データは動画の形でデータ処理し呈示するというように変わっていくだろう.学会誌に発表される論文でも,紙の上では表現できない動的データは必要に応じてパソコンにダウンロードできるようになるだろう.
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