Sweet Spot 美術に見る障害者とリハビリテーション
ブリューゲルの「足なえたち」
大川 嗣雄
1
1横浜市立大学医学部リハビリテーション科
pp.265-266
発行日 1992年3月10日
Published Date 1992/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552107035
- 有料閲覧
- 文献概要
まず下の絵を見ていただきたい.この絵をパリのルーブル美術館で見て以来,絵や美術作品の中に障害者やリハビリテーションがどのように画かれてきたかについて興味を持つに至った.これはブリューゲルによって1568年に画かれた「足なえたち」(The Cripples)と題された絵である.この絵についてリハビリテーション学の上からいくつかの興味ある点があるが,この点については後で述べるとして,まず作者と作品について簡単に触れておきたい.
阿部謹也1)によれば,「11~12世紀から16世紀まで徐々に進行していったヨーロッパ社会の世界史的な転換は16世紀前半に最終的な局面を迎える.そこでは中世末期に発生したあらゆる問題が一挙に噴出し,一大ドラマが展開されたのである.(中略)しかしながら,ここにたった一人でこの中世後期の問題のすべてを担いかつ表現した人間がいた.(中略)いうまでもなくピーテル・ブリューゲルがまさにこの時代全体の転換の生き証人であった」という.
Copyright © 1992, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.