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はじめに
末梢神経障害の中で,絞扼性神経障害は日常よく遭遇する疾患の一つである.上肢においては手根管症候群と肘部管症候群,下肢においては知覚異常性大腿痛(meralgia paresthetica)の発生頻度が高いといわれている.これらに対する治療法は,保存的療法と手術的療法とがある.保存的療法をみると,手根管症候群では,患肢の安静あるいはスプリントによる固定,症状が悪化する肢位や動作の回避などであり,知覚異常性大腿痛では,同様に症状を悪化させる姿勢や動作の回避の指導が重要であり,また抗炎症剤の投与,副腎皮質ステロイド剤の局所注射(以後,局注と略),温熱療法等がある1~4).しかし,スプリント等による手関節の固定や安静は,患肢を制限することにより目常生活動作や仕事等への妨げとなり,また局注では注射針による神経損傷の危険性があったり,ステロイド剤の注入が期待されるほどの効果がないという報告もある.
廣谷5)は,局注は13~22%の効果しかなく,むしろ診断的意義が大きいとしている.Phalen6)は,局注により497名中126名(25%)に効果があったのみで,これには症状の悪化しなかった者も含めている.肘部管症候群では,一般に保存的療法の効果は期待しがたいとされており,観血的療法を行うことが多い5,7).Wads worthら8)の肘部管症候群の20例中,局注を施行した14例をみると,平均2.3年の追跡調査後改善を示す者は少なかった.
当院整形外科では超音波の神経に対する効果9,10)に着目し,1979年から種々の疾患に対する治療に用いてきたが,その一つとして,今回は上下肢の絞扼性神経障害に対して良好な成績を得ているので報告する.
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