書評
秋元波留夫・上田 敏―精神を病むということ
木村 敏
1
1京都大学医学部整形外科
pp.482
発行日 1991年4月10日
Published Date 1991/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552106811
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本書は,わが国の精神医学の最長老である秋元波留夫氏に,リハビリテーション医学の権威である上田敏氏が,精神医学の過去・現在・未来について質問し,秋元氏がこれに答えるという形式で書かれている.対談であるから非常に読みやすく,しかも要所要所では秋元氏が後から丹念に筆を入れて,学問的にも正確な内容が述べられている.
すでに4半世紀前に東大教授を定年退官された著者の秋元氏が,その後も臨床の第一線に立って,精神医療,特にリハビリテーション精神医学の向上に努められただけでなく,なによりもまず,精神を病む患者とその家族に対する社会的偏見の除去に向けて現在もなお余人をもって代えがたい貢献を続けておられることに,私は日頃から深い感銘を受けている.この感銘は,本書を一読してますます強いものとなった.医学者としての最高の地位にあったこの著者が,80歳をはるかに過ぎた現在もなお持ち続けておられる精神病者の社会復帰へ向けてのこの若々しい情熱は,世界的に見ても決して多くの例をみないであろうところの,極めて貴重なものと言わなくてはならない.
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