書評
秋元波留夫・上田 敏―精神を病むということ
保崎 秀夫
1
1慶應義塾大学医学部精神神経科
pp.919
発行日 1990年11月10日
Published Date 1990/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552106387
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本書は上田敏教授が秋元波留夫(前東大教授,松沢病院長)先生に質問するという対談形式になっているが,内容は通常の教科書的なものをはるかに越えた中味の濃いものになっており,長年の秋元先生の考えや歩まれた道が凝縮されて行間ににじみ出ている.精神医学に造詣の深い上田教授の質問は的を射ており,答える例は精力的な秋元先生だけに,300頁余にまとめ上げるには医学書院の方も御苦労があったものと思う.精神医学年表も参考文献もきちんと添えられており,申し分のないものになっている.
全体の構成は,序章,終章のほかに7章あり,序章は「精神の病気をみる視角」と題して,ペンフィールドの不可知論(二元論)に触れながら,精神医学は「心の病気」を「脳の病気」として捉える立場をとるべきこと,心と脳の関係はジャクソン理論が役立つこと,精神病と神経症は連続したものと考えること,そして精神障害における病識について述べられている.
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