追悼
秋元波留夫先生を悼む
高橋 清久
1
1国立精神・神経センター
pp.1316-1317
発行日 2007年11月1日
Published Date 2007/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416100184
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秋元波留夫先生は2007年4月25日,101歳の生涯を終えられた。精神医学・医療・福祉の広い分野における重鎮として,また象徴的存在であった。まさに,巨星墜つという想いでいっぱいである。私は1964年,東京大学精神神経医学講座医局に大学院生として入局した。秋元先生ご退官の3年前である。当時先生は精神医学研究の泰斗としてわが国の精神医学研究全般をリードされておられ,秋元先生に指導を受けることを誇りに思いながらの入局であった。この機会にありし日の先生のお姿を偲びつつ,先生のご業績を時系列的に辿らせていただく。
先生は北大,金沢大,東大と3つの大学で研究をされているが,最初の価値ある学問的業績は北海道の炭鉱爆発事故で生じた一酸化炭素中毒患者の示した失行症を「失行症」という一冊の本にまとめ,神経心理学に新たな視点を加えられたことである。次いで,てんかん研究を精力的に行い,とりわけアンモン角の機能を中心とする研究は世界的に有名であり,後にレノックス賞を受けられている。また,多くのてんかん研究者を育てるとともに,てんかん学会,てんかん協会の発展にご尽力されて,てんかんの基礎研究,臨床研究を振興された。その他,特に精力を注がれた研究に,視床の神経生理学的研究,精神分裂病(統合失調症)の精神薬理学的研究などが挙げられる。その一方で,精神神経学会の理事長,日本精神衛生会理事長などを務められ,精神医学・医療の発展にも多くのご業績を残されている。
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