病院精神医療の展開
精神病院の社会復帰活動を考える—秋元波留夫氏の感想に寄せて
広田 伊蘇夫
1
Isoo HIROTA
1
1赤城会三枚橋病院
pp.76-78
発行日 1983年1月1日
Published Date 1983/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207934
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
編集子の依頼により,私の書『精神病院』(岩崎学術出版)に寄せられた秋元波留夫氏の感想(本誌41巻12号,1070〜72頁)に,気乗りはしないが,ともかく応えることとする.ただ,たがのはずれた感情の流露は私のなじむものでもないし,また本誌が秋元氏や私だけのものでない以上,執筆者の持つべき節度をわきまえて記すことにする.それはともかく,秋元氏が懇切丁寧に拙書を読了され,長文の感想を寄せられたることに,ひとまず感謝の意を記しておきたい.
さて,秋元氏のいささか八方破れの記述の底流に,私の治療実践への問いかけを私は見る.結論的に言えば,この問いかけへの私の返答は極めて簡単である.次のように記すだけでよいのである.〔ひとりの精神科医が,自らの臨床現場において,何をしてきたかは,当の精神科医と直接治療関係にあった病者に,彼は治療者として何をしてくれたかを問えば,おのずと明らかになるものと考えてきたし,今なおそう思いつづけている〕と.臨床に執着し続けるひとりの精神科医としての私は,永年にわたり,つまるところ,この個的関係性をどのように深めてゆくかに腐心し続けただけのことである.その意味では,私は手づくりの職人であり,その結末は病者に問うのが最も妥当であると,私はまず秋元氏に応えておかねばなるまい.
Copyright © 1983, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.