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はじめに
脳性麻痺の治療は伝統的な克服的訓練の時代から神経発達的アプローチの発展により運動障害を神経生理学的に分析し治療する時代へと進むとともに脳性麻痺を運動障害児としてだけではなく複合障害児として理解し療育しようとする方向に進展してきた1).
この間大正年代の高木憲次教授を源に故小池文英先生をはじめとして整形外科医は脳性麻痺の療育に中心的役割を果たしてきた1).時代とともに脳性麻痺の療育における整形外科医の役割は変化し,Bobath,Vojta法の出現で整形外科の出番はなくなったかに思われたが,これらの方法の限界が明らかにされるとともに整形外科的治療が再認識されてきた2~4).神経発達的アプローチの目的は運動パターンの正常化である.整形外科的治療の目的は1)疼痛の除去,2)機能の向上,3)姿勢のアライメントを整える,4)変形拘縮の矯正にある.これらの治療法は相補って効果を高めるもので,その長所,短所を知り一人一人の患児に適した治療を行うべきである.複合障害児として脳性麻痺児のもつ問題は運動障害をはじめ,てんかん,知能,言語,聴覚障害,摂食,呼吸,口腔内衛生などきわめて多彩で難問が多い.療育はこれらの問題を理解し健康管理を行いつつ患児の発達を促し明るい家庭のなかで家族ともども幸せになれるように助力することを目的とするものである.
現在整形外科医は療育チームの中で小児科医,パラメディカルスタッフと障害児のtotal careの目的で協力しあっている.脳性麻痺の療育体制は今後も肢体不自由児施設を中心に発展するであろう.その中でリハビリテーション専門医がどのような役割を担い貢献していくのか一般論を述べることは難しい.本稿では脳性麻痺の運動障害面からみた療育上の問題点を述べてみたい.
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