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はじめに
スキーに代表される冬季スポーツは,その運動のはげしさ・スピード感・要求される高度の平衡感覚等,障害者にとっては他のスポーツでは体験し難い多くの要素を含んでいる.近年その有用性が次第に認められ,その普及発展への期待が大きく広がりつつあり,筆者らはこの機会に,障害者リハビリテーションにおけるその意義・効用・運用上の留意点につき,医学的・工学的・社会的側面より検討することとした.
現在のthree track skiの原型は既に1935年に記載が見られ,1943年にはFranz Wendel(独)がこれによってHandicapped Ski Medalを授与されている.またSeep“Peppi”Zwicknagel(オーストリア)は,両下肢切断後にスキー技術を習得してKitzbuehl Ski Schoolの公認インストラクターとなり,1947年にはBadgastein(独)において100人以上の切断者によりスキー技術を公開している.一方アメリカ合衆国におけるpioneerはGretchen Fraserで,1944年復員軍人切断者のリハビリテーションにスキーを採用している1).このようにして始まった欧米の障害者冬季スポーツはその後社会的支持の中で次第に広まり,現在カナダ,アメリカ合衆国,欧州の各地で幾つもの団体が活動している2~7).
わが国の身障スキーの歴史は,笹川雄一郎氏が1971年にカナダからアウトリガーを持ち帰ったことから始まる.翌1972年には,8名の片下肢切断者による第1回全国身体障害者スキー大会を開催すると共に,アンプテイスキークラブを結成し,わが国の身障スキーの口火を切った.この会は翌年より日本身体障害者スキー協会と改名し,以後毎年全国大会を開催して身障スキーの普及がはかられて来た.
一方車椅子障害者を対象としたチェアスキーの開発が田中ら(1976)によって始められ,1980年には日本チェアスキー協会が発足している.この運動は毎年のチェアスキーツアーを通じて底辺を拡大し,前述の全国身障スキー大会では第13回大会から正式種目に採用され,また1986年からは日本チェアスキー競技大会が開催され,スポーツ競技としてのチェアスキーが発展しつつある.
身障者冬季スポーツの検討にあたって筆者らは,かねてたずさわって来た身障者スキー運動の中で蓄積された経験,文献記載,欧米から寄せられた資料を検討材料としたが,同時に国内での参加者の実態を知るために,日本身体障害者スキー協会・日本チェアスキー協会・北海道障害者スキー協会の会員へのアンケート調査を実施した.調査用紙は235名に配布され,そのうち112部(47.7%)が回収された(表1).これによると,障害者スキーヤーは一般スキーヤーに比し比較的高齢者が多く若年者が少ない傾向が見られ(40歳以上30.4%,29歳以下24.1%,平均36.5歳),また障害発生前からスキーの経験のあるものは25名(23.3%)で,他の大多数は障害発生後にスキーを始めた人達であった.
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