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はじめに
生きがいを感じる対象と考えられるほど,人間の生活に密着してきた現代のスポーツを定義づければ,スポーツとは本人の自発性に基づき,自由に創造的に肉体(頭脳や情感を含めて)をプレイすること,またそれによって得られる満足感や充実感により,生への活力を生み出す人間の積極的な活動と定義することができる.これは,障害者にとってもそのままあてはまるスポーツの定義である1).
人間はスポーツを通してしばしば思いもよらない力を発揮する.リハビリテーションにおいても,スポーツを通して自己に対する自信を深め,再び積極的に生きようとする障害者を数多く認めることができる.その根底に,スポーツが持つすばらしい意義を感じとることができる.次に示す日米の障害者のスキーに関する表現は2),スポーツの意義をよく反映していて興味深い.
「こんなに楽しいことがあったのかと,強く感動した.」
「そのうちに競技に参加するようになり,友達がふえて,私の世界はまったく変わりました.」
「一歩踏み出す勇気と,それを励ます友人がいれば障害者の世界は広がっていきます.」
“If I can do this,I can do anything.”
“Creating challenges,building self-confidence.”
“Learning ski Will change your life.”
ここから,スキーを通しての解放感や充実感のすばらしさと,それが彼らの日常生活の支えや積極性拡大の原動力になることを容易に読みとることができるが,これらはまた障害者のスポーツ全般に見いだすことができる共通要素である.
本稿では特に冬季スポーツ用機器として,初期の開発から15年を経過した“チェアスキー”に焦点をあてながら,機器開発とその実用化の経験から得た障害者のスポーツ機器に関する私見を述べることにする.
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