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はじめに
人口の高齢化の伸長により,なんらかの社会的援助を必要とする老人が増加しており,老人医療や老人福祉への要請が強まっている.このような現状において,保健・医療・福祉の各分野のサービスの量の拡大と質の向上および供給システムのあり方が真剣に求められている.
高齢者問題の所在は,一言でいえばニーズの拡大と費用の増大ということになる.しかし,ニーズと費用を媒介するサービス内容やサービス体制についての問題が数多く存在している.したがって,ニーズの拡大と費用問題のみに着目し,肝心のサービス内容の検討を疎かにするような議論は,慎まなければならない.
在宅障害老人に対する地域におけるケアサービスは,ゆっくりではあるが確実に前進してきており,一部の地域では先駆的な取り組みの中で,有効で効率的なサービスが展開されている.しかし,全国的にみれば,在宅障害老人のニーズに対応したサービスが確保されていると主張することはできない.特に,保健・医療・福祉の分野に大別される各種サービスが,有機的連携の下に,総合的な地域ケアシステムとして円滑に運営されている事例は,きわめてまれである.このようなことは,在宅の障害老人やその家族にとっても,地域住民にとっても,保健・医療・福祉を天職として活動する多くの人々にとっても,まったくの不幸である.
在宅障害老人のケアシステムを地域で構築する仕事は,机上論としては可能であっても,実際に地域で実践してみると,数多い障壁に阻まれ,かなり困難な場合が少なくない.ケアシステムの構築が,保健・医療・福祉分野の共通の課題であると多くの人々が認識しているにもかかわらず,そして,自らもその課題を達成しようと努力している人が多数いるにもかかわらず,壁は厚い.
以下では,在宅障害老人の現状を踏まえた上で,在宅障害老人の地域ケアシステムについて,議論を整理しながら,若干の私見を述べてみたい.
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