巻頭言
リハビリテーションの“啓蒙”と“発展”
鈴木 愉
1
1自治医科大学大宮医療センターリハビリテーション科
pp.925
発行日 1990年12月10日
Published Date 1990/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552106389
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筆者がリハビリテーションに初めて関わりを持ったのは,清瀬市にあるPT,OTの養生校であるリハビリテーション学院に入学した昭和41年である.当時,このリハビリテーションという言葉は一般には耳慣れないものであり,またその概念も知れわたっていなかったため,その学校の持つ役割についての問いかけにも満足に答えることができず,丸暗記した教科書の一節をただただお題目のように唱えるといった具合で,はなはだ心細いものであった.講義も8割はアメリカやイギリスから来た外人によるものであり,毎日毎日英語で書かれた分厚いプリントをわたされ,翌日テストを受けるというように機械的に知識を積め込んでいくものであった.このため,その教育方針に反発して何人かは中途で学校を去っていった.そんな毎日の中で,ほっと一息つくのは学生同士が集まっての話し合いであり,その時よくでた言葉は“パイオニア精神”であった.それは自分たちが先頭に立って日本にリハビリテーションの概念を植え込もうといったものであり,この一種の気負いともいえる気持ちが繰り返されるストレスを跳ね除けていたように感じている.
それから20数年経た現在,リハビリテーションという言葉も,またその意味もほとんどの人が理解するようになり,わが国におけるリハビリテーションの“啓蒙”という当時の大きな目標は完全に成し遂げられたといってよいと思われる.
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