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昨年,仙台で行われた日本リハビリテーション医学会のメインテーマは「リハビリテーション医療と倫理」であった.成城学園長加藤一郎氏の特別講演「患者の自己決定権」にひきつづいて,シンポジウム「リハビリテーション医療とエシックス」が開催された.昨年10月には厚生省薬務局長通知として「医薬品の臨床試験の実施に関する基準について(通知)」が出され,新薬の開発における治験に際しての被験者の同意と,被験者に対する説明事項が細かく規定されて,被験者の人権擁護が強調された.本年1月には,日本医師会生命倫理懇談会(加藤一郎座長)から「説明と同意」についての報告書が日本医師会長あてに提出された.このように,「説明と同意」を中心とした医の倫理は,現在のわが国の医学会の大きな問題となっており,リハビリテーション医療においても同様であるので,今月の特集として「リハビリテーション医療と倫理」が選ばれた次第である.
今回の特集は,昨年のリハビリテーション医学会会長今田拓氏と,シンポジウム「リハビリテーション医療とエシックス」の演者の論文によって構成されている.まず,今田拓氏の「リハビリテーション医療と倫理」と題する総論的論文に始まり,佐直信彦氏の「リハビリテーション医療における医師・患者関係」,五味重春氏の「医師と関係医療職の倫理に関する教育の現状と問題点」,伊藤利之氏の「リハビリテーション医療と社会福祉」とつづき,加藤尚武氏の「インフォームド・コンセントにおける本当の決定主体は誰か」で終わっている.いずれも大変興味深い内容で,教えられるところが多い.現在のわが国の医学会で大きな問題となっている倫理を,リハビリテーション医療の場で改めて見直す好い機会を与えた特集となった.
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