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今月の特集はリハビリテーション行政である.リハビリテーションの業務は行政の影響をうけることが極めて大きいので,リハビリテーションにたずさわる人々の行政についての関心は著しく高いように思われる.この特集では,リハビリテーション行政への要望と題して,本誌編集同人の先生方に御意見を寄せていただいたが,これはわが国のリハビリテーションの現場のなまの声として貴重なものと思う.今田氏の論文はこれらの方々のいわば代表として,じっくりとリハビリテーション行政の問題点を論じていただいた形となった.これに対するに行政の側からは,厚生省社会局更生課所管行政について板山氏が,労働省の心身障害者雇用対策行政について古山氏が,地方自治体の代表として神奈川県におけるリハビリテーション行政について,阿部・大木氏が,それぞれ,格調の高い論文を寄せられた.これらの特集論文の中で私の印象に特に強く残った言葉を一つずつだけ挙げると,先ず,板山氏の在宅サービス事業に関する欠陥の認識,すなわち,メニューの多さに比して内容の薄さ,諸施策間の連携の無さ,地方公共団体の実施計画のアンバランスなどの指摘(中枢におられる方がこういう認識を持っているならば将来は明るいと感じた),古山氏の,納付金を納めればそれでよいという意識を持たれれば,心身障害者雇用の所期の目的は達成できないので,国民の理解の育成強化が必要との所論,阿部・大木氏の,国レベルの縦割り行政を慨嘆するよりも,地方レベル・現場レベルでの横の連携を強化してゆく方がより現実的・効果的であるとの指摘,今田氏の,障害の認定は医師の診断を参考資料として各行政官庁が認定するので,身障障害等級を医師が決める権限を有しているように誤解してはならないとの指摘などであった.この特集を通じて,わが国のリハビリテーション行政の問題点が浮き彫りにされるとともに,国や地方自治体の積極的な姿勢もまたうかがい知ることができるものと思われる.
講座は脳卒中の3回目として吉田氏の病理学的な面での最新の知見,呼吸器の3回目として古賀氏の肺外科と肺理学療法についてで,両者ともに内容豊かで読者に益するところ極めて多い論文と思われる.
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