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はじめに
肥満(obesity)の語源はラテン語のobedo(食べすぎ)だそうであるから肥満の成因についての基本的な捉え方については今も2千年前も余り変ってないことになる.しかし肥満を健康度を判定する目安として見た場合,これがマイナスの健康度すなわち病気に対する赤信号として捉える様になったのは人類史上から見てもかなり最近になってからの様である.日本においてはやっと10年位前からではなかろうか.その理由として,戦後食糧の供給が安定したことにより結核の激減とあいまって国民の平均寿命が確実に延び,それと共に心疾患,糖尿,高血圧などの成人病が漸増し,これらが肥満者に起こる率の高い事が明らかになった事があげられよう.
ここで先ず注意しておきたいのは体重増加がすべて肥満とは言わないということである.例えば,ボディビル等によって手足や胸部等の筋肉成分(その中身は主としてタンパク質)が増え,その結果体重が増加したとしても,これはここで言う肥満ではない.すなわち,肥満とは皮下脂肪組織にある脂肪細胞中の中性脂肪(殆んどトリアシルグリセロールからなる)が異常国際化学連合および国際生化学連合よリ旧名称のトリグリセライドをトリアシルグリセロールに改める様に勧告されてから久しいが,未だに一般化されないのは残念である.我々が折角正しい名称を使う様に医学生を指導しても,臨床を学ぶ時点でスタッフや先輩が旧称を使うためにそれに流されてしまうのであろう.本稿では,まだ多くの読者には耳なれないトリアシルグリセロールで統一するので了承されたい.トリグリセライドとは“グリセロールの3重合体”の意味になるのである.に増加することによる,体重増加の場合に限るのである.
それでは,ある人が肥満であるか否かの見分けはどうするのか?一番簡便な方法は身長と体重を色々の式に代入して計算する.
例えばBody Mass Index(BMI)を以下の式か
BMI=体重(kg)/身長2(m)
ら算出して,これが男子で23,女子で22以上を肥満とするとか,もっと簡単には体重(kg)が(身長<cm>-50)×1/2以上の場合を肥満とする等である.しかし,もう少し精度を望む時は身長別の標準体重を表記した標準体重表(松木氏表が有名だがやや古い)や,生命保険会社等の調査した死亡率最低の身長別体重表というのがあり,これらを参考にするのがよい.最近は(腹囲)2×身長等がより改良された肥満の指標として提案されている.
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