コンタクトレンズ(51)
三好達治のこと
長谷川 泉
1
1本社出版部
pp.41
発行日 1964年6月10日
Published Date 1964/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203132
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「四季」派の主柱として,近代詩に伝統的な抒情に加えるにフランス文学的なしゃれたエスプリを盛り込んだ三好達治が死んだ.その清洌な詩精神は,亜流の存在を許さぬものがあり,新しがりやだけのモダニズムとは別個の魅力を持っていただけに,三好達治を失った詩壇の淋しさは蔽い得ないであろう.
詩人は単純であるといえる.だから,高村光太郎もそうであったが,三好達治もまた戦時中,軍部の精神総動員の手先きとなって,おのれの才華を非近代的な方向にまげた一時期があった.もちろん,狂信的な軍国主義者でないことはあきらかなのだが,かれらは詩作を通して,軍国主義と戦争遂行に血道をあげたような印象を与えたぬぐいえない傾向もある.そのような反省から,高村光太郎は,戦後筆を折り東北の山奥にこもったことがあった.
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