巻頭言
膨らみきったリハビリテーションの概念
奥川 幸子
1
1養育院附属病院
pp.3
発行日 1986年1月10日
Published Date 1986/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552105515
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主治医(リハ専門医ではない):これから歩けるようになるかどうか,リハビリテーションをやってみましょう.
精神科医:この(呆け)症状は,家に帰れば治るよ.
PT:訓練すれば歩行までもっていけるかもしれないが,かえって危険ではないか.
看護婦:このような(呆け)状態では,家族が家で看るのは無理よ.SWのところで転院先の病院を紹介してもらった方がいい.
家族(実の娘):下の始末が自分でできるようになれば,家で看てあげたい……と,リハ訓練を受けないまま親を手放すことに不充足,不安の態で困惑気味.
主役は脱水症状で入院した83歳の呆け傾向にある老婦人.ほんの数日間の点滴で危機を脱した彼女の意向は“家に帰りたい”と,ベッドならぬ畳ぶとんから傍のポータブル便器に“いつこけるか”という周囲の思惑を無視してあやふい動作で這い上る.ところが,個室から大部屋に移る否や,病室の床を這い這いし,他患の点滴の管をひっぱり,危険この上なしの存在に舞い戻った.
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