特集 こんなときどうする!?―泌尿器科手術のトラブル対処法
Ⅳ 開腹手術
■根治的腎摘除術
064 クランプした間の下大静脈が急速に膨らんできた
加藤 智幸
1
,
冨田 善彦
1
Tomoyuki Kato
1
,
Yoshihiko Tomita
1
1山形大学医学部腎泌尿器外科
pp.181-183
発行日 2011年4月5日
Published Date 2011/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102312
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Q 根治的腎摘除術を開始した下大静脈内腫瘍塞栓のある症例。腎動脈を結紮して,腫瘍塞栓上下の下大静脈,反対側腎静脈をクランプすると,クランプされた間の下大静脈が急速に膨らんできた。
[1]概 説
腎細胞癌には,比較的容易に腎静脈内から下大静脈に進展するという特性がある。腎腫瘍とともに腫瘍塞栓を除去することにより,生存期間の延長が見込まれる1)。腫瘍塞栓のレベルは図1に示すように4段階に分類される2)。下大静脈内に腫瘍塞栓を認める腎細胞癌の手術では,静脈内の腫瘍塞栓を除去するために患側の腎動脈を結紮した後に腫瘍塞栓上(図2a~cのいずれか)および下(図2d)の下大静脈と対側の静脈(図2e)をクランプし,腫瘍塞栓の存在する領域の血流を遮断してから静脈壁を切開して,腫瘍塞栓を摘出する。その際に下大静脈周囲の剝離を十分に行い,流入する静脈を適切に処理しておかなかった場合に設問のような状況が起こり得る。本項では,レベル3以下の腫瘍塞栓における状況を想定して対処法につき述べる。
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