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はじめに
歩行能力を失った障害者の移動能力を代替するもっとも有効な手段は,現在のところ車椅子であり,これに代るべきものの開発は当分の間,期待しがたいと思われる.それ故,障害者の要求を少しでも多く満たす車椅子を製作することが,われわれの目下の責任であろう.
当センターは義肢,装具,車椅子の製作に際しての処方,仮合せ,完成時チェックをブレースクリニックによって行っている.ブレースクリニックの意義については沢村等の論文1)に詳しいので省略するが,当センターの特徴は,処方決定時に各リハチームと障害者自身からの情報提供とその十分な討論を行っている所にある.ここに車椅子の製作過程をフローチャートの型式で図1に示す.担当医から発行された依頼箋が連絡調整室を経て各リハチームに配布されると,各科は製作に必要な情報,即ち身体的な障害評価結果,身体計測値,屋内外環境,家庭社会状況を盛り込んだ情報カードと,これをもとにした基本設計図をブレースクリニックに提出し,ここで討議した最終結論を処方箋として発行している(図2,3).
この間,処方ミスを未然に防ぐために,私達は処方用仮車椅子を製作し,使用している.これは既に義肢装具研究会に報告した通り,座の幅,長さ,角度と高さ,背もたれの高さと角度,フットレストの角度,後車輪車軸位置等の計12ヵ所が調節,可変式となっており,対象患者を実際に乗車,走行させて実践的にテストすることが出来,臨床面で大いに役立っている(図4)2).
私達は以上に述べたごとく,極めて慎重に車椅子の処方と適合判定を行っているのであるが,その結果を障害者の立場に立って反省してみると,かならずしも満足できる結果を得ていないこともあるのが実情である.そこで今回,その問題点の所在を明らかにし,原因を追求する目的で,当センターで製作した車椅子の追跡調査を行った.
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