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はじめに
川崎リハビリテーション学院は,1)人をつくる,2)体をつくる,3)深い専門的知識技能を身につけるという川崎医科大学の建学の精神に沿って理学療法教育を行い開設10年を迎えるに至った.しかしこの建学の精神はあくまで抽象的目標であり,大切なことはそのために,何をどのようにして教え,具体的到達目標をどこに置くかということである.
当学院では新入学生と共に確認し合う基本的学習態度がいくつかある.これらは最初からあったものでは無く,数年間に次第に形成されたもので今後も変って行く可能性はある.その第一は,1/3は教える,1/3は自分で学ぶ,1/3は経験することによって自らの身体で学ぶということである.理論知識は教えることもできるし,自分で学ぶこともできる.しかし理学療法業務の中には身体で経験することによってのみ学び得る技術もあり,それらは当然身体で覚えなければならない.
第二は,資格ある理学療法士(以下PTと省略)が行う理学療法は,無資格の人が行う理学療法より1)より安全に行い得る,2)より早く目標に達し得る,3)より完全に目標に達し得るということを最終目標とすることである.現在の日本では実に多種の人によって理学療法が行われている.資格ある者はこの3点によって他者との区別をつけるべく努力する.
第三は,入学者は目的志向がはっきりしていて,PTになることを前提に自ら努力を行い援助を求めている者であること.したがって種を蒔く畑は自ら耕し,より良き苗を育てる土壌の管理を自ら行うこと.
第四は,理学療法を行うためには感受性ある豊かな人間性が求められていることを自覚すること.しかしこの前提のみではボランティアの域を出ない.その豊かな人間性の根底には,PTとして必要な基礎知識・臨床医学の知識,理学療法理論技術が十二分に備えられていなければならないことを認識する.
第五は,あらゆる面で患者にとって最も有益なPTであると自負できるように努力することなどである.つまり学生自らが学ぶという基本姿勢を強調してようやく10年を経過した.こうした基本理念を実践した経験をもとに現在のPTの教育の問題点について述べる.本来ならばこのテーマでは,教育とは何か,PTとは何かを述べなければならないが,これらの一般論はすでに発表されている論文にゆずることにする.
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